『あじわい』No.231(2026 SUMMER)に寄稿しています
2026.07.06
掲載情報

虎屋文庫50周年記念!「和菓子の〈はじめて〉物語」展(10月1日~11月23日)にて実物をご覧いただけます
虎屋文庫50周年の特別企画として、スタッフが思い思いにお菓子を考案しました。虎屋文庫への想いや古典文学からの想起ほか、切り口はさまざま。菓銘と意匠による見立て、意外な素材の組み合わせなど、さまざまな発想から生まれたお菓子をお楽しみいただければ幸いです。
*いずれも空想のお菓子につきご紹介のみとなります。販売の予定はありません。

厄よけ宝珠(やくよけほうじゅ)
きんとん製 御膳餡入
古来、強い香りが邪気を祓うと信じられてきたことをふまえ、山椒・肉桂という和のスパイスを用いて、きんとんに仕立てています。紅色のそぼろが護摩焚きの炎や仏閣などに見られる火焔宝珠の文様を思わせるところから名づけました。

ふみのくら
薯蕷製 白小倉餡入
「ふみのくら」は、たくさんの書籍や史料を納めた倉庫を意味する「文庫(ふみくら)」にちなんでつけた菓銘です。四角い薯蕷饅頭の中央に緑色の線を引き、下に花布(はなぎれ)*を思わせる紅色を施して、開いた本を表現しました。
*花布…背表紙内側の上下に貼りつけた小さな布のこと

水漬く白玉(みづくしらたま)
琥珀製
『万葉集』の防人(さきもり)歌「父母(とちはは)え斎(いは)ひて待たね筑紫(つくし)なる水漬く白玉採りて来までに」*に想を得ておつくりしました。 琥珀羹と道明寺羹を、透き通る海の浅瀬に、白小豆を白玉(真珠)に見立てています。
*「父母よ、私の無事を祈り待っていてください 任期を終え、筑紫(現在の福岡県)の真珠を採って帰ってくるまで」の意

書庫の秘密(しょこのひみつ)
煉製
虎屋文庫の書棚に古い帳簿や書籍がぎっしり並んでいるさまを見ると、書庫が何か菓子の大発見につながる秘密を抱えているかのように感じます。和菓子の化身が住んでいて、史料を守っているのかもしれません。

マロングラッセ桃山(マロングラッセももやま)
桃山製 栗餡きざみマロングラッセ入
とらやパリ店にちなみ、フランスの方にも馴染み深い焼菓子として考案しました。洋酒の香りと栗のつぶつぶとした食感が楽しめます。
パリ、創業の地・京都、そして東京……とらやゆかりの三都市の名を入れて仕上げました。

永久のきらめき(とわのきらめき)
琥珀製 白餡入
虎屋には古くからお客様に菓子をお届けするための「お通箱(かよいばこ)」があり、現代に制作した『平成のお通箱』もあります。
『永久のきらめき』は、箱に施された蒔絵や螺鈿の装飾を模して、色とりどりの琥珀羹を閉じ込めた手箱形の菓子です。菓銘は和菓子がきらめいた存在であり続けることを願ってつけました。

水仙蓬が嶋(すいせんよもがしま)
葛製 御膳餡入
御膳餡に3色の餡玉を入れ、葛製の生地で包んでいます。
『蓬が嶋』といえば小饅頭が複数入った大饅頭ですが、今回は銘々で楽しめる小さなサイズを考案しました。
餡がうっすらと透ける、夏らしく涼やかな菓子です。

八重垣姫(やえがきひめ)
湿粉製
文楽作品「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」の「奥庭狐火(おくにわきつねび)の段」を観劇し、考案した菓子です。白い湿粉製で白狐を、紅の煉製で八重垣姫を表現しています。また、夜更けの奥庭に咲く菊をうっすらと写しました。

七色餅(なないろもち)
蕨粉製・葛製
希少な素材である蕨粉(わらびこ)と葛粉の生地を組み合わせ、茶巾絞りにした贅沢な菓子です。
茶、緑、紅、黄とさまざまな色を配し、錦のように華やかで、楽しげな見た目に仕上げました。彩り豊かなさまを、菓銘の「七色」に込めています。

営みのつづり(いとなみのつづり)
焼物製
虎屋の歴史を象徴する御用帳(注文記録)は、何百年も前の菓子の名前や、どんな場面で使われたのかなどを知ることができる史料です。小倉羹を焼物製の生地で挟み、先人の営みのつづりである御用帳を表しました。

生々流転(せいせいるてん)
羊羹製 抹茶餡入
抹茶味の緑餡を羊羹製生地で巻いています。
「生々流転」とは、万物が絶えず生まれては変化し続けるさまを指す言葉です。姿を変えながら永続するイメージを、餡の有機的な形、羊羹製の白と紫のマーブル模様に仮託しました。

未来の古典(みらいのこてん)
煉製
今のベストセラーが永く読み継がれ、年代を経て『伊勢物語』や『源氏物語』のようにいつしか古典へ。将来、きっと菓子の題材にもなることでしょう。
『未来の古典』は、村上春樹氏のベストセラーを鮮やかな赤・緑の2色で表現しました。
*いずれも空想のお菓子につきご紹介のみとなります。販売の予定はありません。
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